監修:楊 敏 先生(中医学講師)
年々夏の暑さは厳しくなり、各地で毎年のように最高気温が更新されていますね。日本の夏は湿度も高く、蒸し暑さにやられて食欲不振などの体調不良に悩む人が多いです。今回は、中国の伝統医学である中医学をもとに、蒸し暑い夏の健康的な一日の過ごし方をまとめました。
日本の夏に多い「暑邪」と「湿邪」による症状
四季をさらに6つに分けた「二十四節気」では、小暑(2020年は7月6日)から処暑(2020年は8月23日)まで約2ヵ月間あります。中医学ではこの間の期間を「三伏(さんぷく)」と呼び、「伏邪(ふくじゃ)」(ここでは「暑邪」を指す)により1年で最も蒸し暑い期間としています(2020年は7月16日~8月15日)。蒸し暑さの原因である「暑邪」と「湿邪」が多すぎることにより、以下のような体の不調が現れやすくなります。
(1)「暑邪」による体への影響
暑くて汗を多くかくことにより津液や気を消耗しやすくなります(耗気傷津(もうきしょうしん))。
【気になる症状】
顔が赤くなる、口渇、尿が少ない、倦怠感・無気力、心煩(胸に不快感と熱感がある)、眠れない、熱中症 など
(2)「湿邪」による体への影響
湿は重濁(重々しくどんよりしている状態)で、「脾胃(ひい)」(胃腸)を傷める特徴があります。特に湿気が多く蒸し暑い梅雨の時期に影響を受けやすいです。
【気になる症状】
体と四肢が重くだるい、浮腫みやすい、皮膚にかゆみを伴う赤いぶつぶつの丘疹(きゅうしん)がでる、水ぶくれが出てジュクジュクする、食欲不振、吐き気、軟便下痢になりやすい など
夏バテしない基本の「暑邪・湿邪」対処法
暑さを避け、潤いを養うことで気を充実させます。
スイカは清熱・祛暑・生津の働きがある食材です。特にスイカの皮の白い部分が優れているので、切り取ったものに塩を塗って天日干しにし、短冊切りにしてごま油で炒めるとおいしくいただくことができます。夏のごはんのおかずにおすすめです。
脾胃を傷めやすいものは避け、湿を取り除きます。
蒸し暑い夏の1日の過ごし方・朝編
蒸し暑い夏の1日の過ごし方・昼編
また、汗を抑えるために止汗剤を使う人は、使い過ぎに注意。汗をかくことは、散熱効果もあるため、汗をかかないと肩こりなどが悪化することも。水分補給をしながら適度な汗をかいて発散させましょう。
坦々麺、麻婆豆腐 など【仕事中でもできる手のむくみ改善ツボ】
中渚(ちゅうしょ)…手の甲の薬指の骨と小指の骨が交わる付け根にあるくぼみ。親指やペンの丸い部分などを使ってじんわり押さえましょう。
蒸し暑い夏の1日の過ごし方・夜編
解谿(かいけい)…足首を曲げたときに前足首のシワの中央にできるくぼみ、前足首の腱と腱の間。親指でじんわり押さえましょう。夏バテやむくみに強い体を作り、暑い夏を楽しく過ごしましょうね。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 敏 先生
楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。