監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.38
気候が暖かくなるにつれ薄着になり、肌を露出する機会も増えてきます。しかし、これから迎える湿気の多い梅雨から夏の時季には、全身にむくみが起こりやすくなるとされています。今回は、これからの時期に露出が多くなる足にフォーカスして、中医学で考える「むくみづらい美脚づくり」をご紹介します。
むくみは病気が原因の場合も。2つの「簡単むくみセルフチェック」
「じめじめ」を招いてしまう水分の摂りすぎを防ぐ方法
・湿邪を溜めやすい塩分過多、濃い味の食べ物や、ジュースやビールなどの冷たい飲み物はなるべく避ける
・汗をたくさんかいたときは、水分をイッキ飲みせずに一口ずつ飲む
余分な「じめじめ」を溜めやすい体質3タイプ
水分を上手く排出できない原因を体質で分けると、大きく3タイプあります。
(1)胃腸の元気が足りない「脾気虚(ひききょ)」タイプ
「脾」(胃腸)の気には体全体を温め、エネルギーを作るはたらきがあります。そのため、脾気が低下していると体が冷え、疲れやすく、水分代謝も滞りやすくなってしまうのです。
また、脾は筋肉と関連が強い臓腑で、脾の働きの低下は筋肉が衰える原因にもなります。ふくらはぎが柔らかく筋肉が少ない方は脾気虚タイプに多く見られます。第二の心臓と言われるふくらはぎは、血液や水分を心臓に押し戻す役割を持っているので、まずは脾胃を養い、筋力をつけることが大切です。
また、血の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」(血行不良)の症状がみられることも。上記の症状に加えて、舌の裏に青黒く静脈が浮き出ている、目の下にクマが目立つなどの症状がある方は血の巡りを促す養生を心がけましょう。
水分代謝を司る「腎」の働きが弱いと、湿邪が溜まりむくみを引き起こします。また、腎の陽(エネルギー)が低いと温める力も低下します。やかんの湯のように、温める力が弱いと湿邪も上手く気化されません。このタイプは腰痛や呼吸が浅い方に多く見られます。このように体質による原因だけでなく、環境によって湿邪を溜めやすくなってしまうこともあります。例えば、湿気が多い気候は毛穴や汗孔からの水分の蒸発「気化作用」を妨げる原因に。また、クーラーがきいた室内で体が冷え、血流が悪くなり老廃物の流れが滞ってしまうことも、梅雨から夏の時期にむくみやすい原因の一つです。
むくみづらい美脚をつくる4つのポイント
湿邪を排泄しやすくするためにまずはできることからトライ!
(1)夏の冷房は弱めに設定し、体を冷やさない工夫を
(2)適度な運動で汗をかく
(3)血液とリンパの流れが促す「しょうが湯」で足湯
しょうが10~30gを入れた水を沸騰させ、ある程度冷ましてから使います。古代の中国では、むくみや水腫のときに、しょうがの皮などを使った「五皮飲(ごひいん)」という処方が使われていました。
(4)水分代謝を促す食材を摂り入れる
しょうが、山芋、豆類、かぼちゃ、栗、牛肉、うなぎ、玉ねぎなど。はと麦茶、紅茶、黒茶などのお茶もおすすめです。
【おすすめの生薬】
・脾胃を健やかにし気を補って、水分代謝を促す「健脾補気利水」の生薬
黄蓍(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、蒼朮(そうじゅつ)、山薬(さんやく)、茯苓(ぶくりょう)、シベリア霊芝(しべりあれいし) など
・温めて血流を促す生薬
当帰(とうき)、丹参(たんじん)、田七人参(でんしちにんじん) など
美脚は一日にしてならず!脚の筋力アップ3点セット
(1)立った状態でかかとを上げる一日3~5セット
(2)座った状態で足をグーパー10回、これを1セットとして一日3~5セット
(3)脚ツボマッサージ
・足三里(あしさんり):膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下
・三陰交(さんいんこう):内くるぶし中心から指幅4本分上の骨の後ろ
・湧泉(ゆうせん):足裏の中心より上の方、足指を曲げると「人」の字状の交点にできるくぼみ
空き時間に小まめに実践して、無理なく継続することが大事です。むくみのないすらりとした美脚を目指しましょう。
この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など