監修:楊 暁波 先生(中医学講師)
楊暁波先生の中医美容レッスン vol.28
いつのまにか、背中や胸にできている肌のブツブツ。水着や肌見せファッションを楽しみたい夏は、そんな「体ニキビ」が気になる人も多いのでは?
ニキビは肌表面だけの問題ではなく、体のバランスが崩れているSOSのサイン。繰り返すニキビに悩んでいる人は、この機会に自分の体質を見直して、体の中からすっきりキレイな肌づくりをめざしましょう。
「体ニキビ」の原因は、皮脂や汗だけじゃない!
体ニキビは、過剰な皮脂分泌や細菌感染などが主な要因に。そのため、皮脂線が多く、汗をかきやすい胸や背中は、菌が繁殖してニキビができやすくなります。
ただし、胸や背中のニキビが繰り返しできてしまう場合は、卵巣トラブルによるホルモンバランスの乱れ、体内の過剰な熱など、体の不調が根本の原因となっていることも。ただのニキビと油断をせず、身体の状態をしっかりチェックして適切なケアをすることが大切です。
そのニキビ、過剰な男性ホルモンが原因かも!
排卵障害の一つに「PCOS」(多嚢胞性卵巣症候群)という症状があります。これは、卵巣の中に多数の卵胞(卵細胞を包む袋)ができ、その発育に時間がかかって排卵が起こりにくくなる状態。卵胞の中では男性ホルモン(テストステロン)が作られるため、血中の男性ホルモンが過剰になり、ニキビや多毛といった男性化の徴候が起こりやすくなるのです。
体ニキビが慢性化している人は、こうした卵巣トラブルが潜んでいることも多いので要注意。次の症状チェックを参考に、ニキビの原因となる身体の不調をしっかり見極めましょう。
PCOSは深刻な病気ではありませんが、不妊につながることもあるのできちんと対処を。気になる症状がある人は、早めに医療機関の診察を受けましょう。
タイプ別・「体ニキビ」の中医学ケア
体ニキビができやすい体質は、主にPCOSなどの不調がある「卵巣トラブルタイプ」、体内に余分な熱と湿気がこもる「血熱痰湿(けつねつたんしつ)タイプ」の2つ。
気になる症状から自分の体質を知り、ニキビの原因となる不調を根本から改善しましょう。
【 卵巣トラブルタイプ 】
ニキビの原因となる卵巣トラブル「PCOS」(多嚢胞性卵巣症候群)。その特徴的な症状は次の通りです。
□月経不順(月経周期が長い)、無月経
□ニキビ、多毛、低音声などの男性化徴候
□肥満気味
□月経量が多い、月経の出血が止まらない
□不妊
中医学では、こうした卵巣トラブルは五臓の「腎」と深く関わっていると考えます。腎は生命エネルギーの根源であり、生殖の働きやホルモンの状態と密接に関係する臓器。そのため、排卵やホルモンのバランスを整えるためには、腎を養い、働きを健やかに保つことが大切です。
・おすすめ食材
黒豆、黒きくらげ、黒ごま、わかめ、昆布、くるみ、栗、松の実、山芋、ごぼう、アスパラガス、桃、プルーン など
・おすすめ生薬
紫河車(プラセンタ)、亀板(キバン)、ハシマ油、丹参(タンジン)、白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ) など
【 血熱痰湿タイプ 】
身体に過剰な熱がこもり、「血」が熱を持った状態に。余分な湿気が溜まり、気・血・津液の循環を阻害し、巡りが滞ってニキビや吹き出物などの肌トラブルにつながります。
□肌が荒れやすい
□便秘がち
□辛いものや脂っこいものが好き
□甘いもの、乳製品のスイーツが好き
□肥満気味
□のぼせがち
□汗をかきやすい
□生理前にニキビができやすい
□目に充血がある
□舌の色が赤い、舌苔が厚い
□赤・紫硬いニキビや吹き出ものが出やすい
このタイプは、体内にこもった余分な熱を冷まし、余分な湿気を取り除いて身体をスッキリさせることが大切。脂っこいものや甘いものが多い偏った食生活、過剰なストレスなどは、血熱と痰湿を招く大きな要因となります。蒸し暑い夏は特に熱がこもりやすいので、日頃の生活習慣をしっかり見直しましょう。
・おすすめ食材
トマト、レタス、きゅうり、セロリ、苦瓜、大根、なす、みょうが、スイカ、はと麦茶、緑茶、ミントティー など
・おすすめ生薬
地黄(ジオウ)、牡丹皮(ボタンピ)、芍薬(シャクヤク)、大黄(ダイオウ)、山梔子(サンシシ)、薏苡仁(ヨクイニン) など
夏を乗り切るニキビ肌対策
ニキビ知らずのすっきり肌を保つためには、体質改善はもちろん、日々のケアも欠かせません。夏のお手入れは、「熱を冷ます」「肌カビの繁殖を防ぐ」の2つがポイント。涼茶やスベリヒユパックなどを上手に取り入れて、汗ばむ季節の肌トラブルを防ぎましょう。
・「涼茶」で身体の熱をスッキリ
夏になると、中国の人々が愛飲する涼茶。漢方由来のハーブティーのようなお茶で、身体の熱を冷ます暑気払いの効果が期待できます。
ポイントは、お茶を冷やし過ぎないこと。冷たい飲み物は胃腸の負担になるので、夏バテ予防のためにも常温程度で飲むようにしましょう。
・暑気払いには「涼茶」
身体の熱を冷ます金銀花(キンギンカ)、野菊花(ノギクカ)、蒲公英(ホコウエイ)、紫花地丁(シカジチョウ)、龍葵(リュウキ)を配合した涼茶などがおすすめです。
・スベリヒユスキンケア
抗菌・抗炎症作用のあるスベリヒユは、雑菌が繁殖しやすい夏のスキンケアにぴったり。ローションやパックにして使えば、汗ばむ季節も肌をすっきり保つことができます。
※スベリヒユローションの作り方
100mlのお湯に茶葉(飲む時の倍量程度)を入れ、5〜10分置く。冷ましてボトルなどに詰め替えればローションに。シートに浸してパックにするのもおすすめです。冷蔵庫に保存し、2〜3日で使いきりましょう。
・耳ツボマッサージ(画像参照)
熱を鎮める「耳尖ゾーン」:身体の奥にこもった熱を発散し、ニキビの熱症状を鎮めます。
ホルモンバランスを整える「内分泌ゾーン」:生理前後など、ホルモンバランスの乱れでニキビができやすい人に。
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この記事を監修された先生
中医学講師楊 暁波 先生
楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など