監修:菅沼 栄先生(中医学講師)

「あー、疲れた…」そんな言葉が、日頃から口ぐせになっている人も多いのでは?日常的な疲労はつい軽く考えがちですが、「疲れた」という感覚は体からの大切なサイン。放っておくと重症化する心配もあるので、しっかり体質を改善して元気を取り戻しましょう。

「疲労」は休みを必要としているサイン

なんとなく体がだるい・重い、朝なかなか起きられない、やる気が出ない…。こうした慢性疲労の症状を訴える人は多く、インターネットやスマートフォンの普及、ストレスの増加といった環境変化に伴い、その数は増加傾向にあると言われています。
疲労を感じる大きな要因となるのは、過度な運動や労働といった肉体的ストレス、精神的ストレス、暑さ寒さといった環境ストレスなど。こうした負荷によって体がダメージを受けると、私たちは「疲れた」と自覚することで休息を取り、心身の元気を回復させているのです。つまり、疲労は体が「休み」を必要としているサイン。無理をせず、しっかり休んで身体をケアすることが大切です。
 
中医学では、慢性疲労は、体内のエネルギーが不足する「気虚(ききょ)」、体の栄養物質が不足する「血虚(けっきょ)」、生命エネルギーが衰える「腎の虚弱」などが主な要因と考えます。
特に病気ではないけれど、元気が出ない。そんな慢性疲労の症状は、病気になる一歩手前の「未病(みびょう)」の状態。そのため、体質を改善し“未病を治す”ことに重点を置く中医学の養生がとても効果的と考えられています。
 
慢性疲労を放っておくと、体調の悪化や思わぬ病気を招いてしまう心配もあります。ただの疲れと油断をせず、積極的に改善するよう心がけましょう。

check!タイプ別・「慢性疲労」対策

疲労と言っても、その程度はさまざま。睡眠を取って回復できるようなら問題ありませんが、休んでも疲れが取れない状態が続いている場合は、慢性疲労と考えて積極的に改善しましょう。
※慢性疲労は病気が原因で起こることも。改善が見られない場合は一度医師の診察を受けましょう。

1 エネルギー不足の 「気虚(ききょ)」タイプ

気になる症状
肺の症状:息切れ、汗が出やすい、かぜを引きやすい、喘息、乾燥肌、便の乾燥、声が弱い、顔色が白い、舌が大きい、舌苔が薄く白い
脾胃の症状:疲労感、倦怠感、食欲不振、胃もたれ、お腹の張り、下痢、軟便、痩せ気味、顔色が黄色い、舌の色が淡い、舌に歯痕がある、舌苔が白い
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改善ポイント
身体の活動は、体内を巡るエネルギー「気」によって支えられています。そのため、気が不足すると疲れを感じやすくなり、また回復もしにくくなるため、慢性疲労を招きやすくなるのです。
 
気の不足と深く関わる臓器は「肺」と「脾胃(ひい)」(胃腸)。
肺は、呼吸によって気の源となる「清気(せいき)」を取り込んでいるため、その機能が低下すると気の不足を招く要因に。また、肺が弱くなると免疫力も落ち、病気になりやすい、回復しにくい、といった虚弱体質にもつながります。
一方、食事から取る栄養も、気を生むための大切な要素。そのため、脾胃の働きが弱くなると栄養を十分に取ることができず、気の不足を招いてしまうのです。また、脾胃の不調は全身の栄養不足にもつながり、四肢や筋肉も十分養うことができないため、動くと疲れを感じやすくなります。

肺は乾燥に弱いので、体内の潤いを保つよう心がけて。暴飲暴食や冷たい飲食は、脾胃の負担になるので避けましょう。
摂り入れたい食材
肺を養う:白きくらげ、百合根、きのこ類、卵、梨、はちみつ、ねぎ、しょうが など
脾胃を養う:大豆製品、アジ、豚肉、鶏肉、牛乳、いんげん豆、じゃがいも、なつめ、りんご、しそ など

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2 体の栄養不足 「血虚(けっきょ)」タイプ

気になる症状
心の症状:動悸、不整脈、胸苦しい、心が痛む、不安、不眠、顔色が白いまたは暗い、舌の色が淡いまたは暗い
肝の症状:憂うつ、イライラ、不眠、めまい、白髪、脱毛、ドライアイ、眼精疲労、月経不順、月経量が少ない、足がつる、手足のしびれ、爪が薄い、舌の色が淡い
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改善ポイント
全身を巡って臓器や組織に栄養を与える「血(けつ)」は、心身を健やかに保つための大切な物質。そのため、血が不足すると臓器の働きが弱くなり、精神的にも疲れやすくなって、慢性疲労を招きやすくなります。

血と関係が深い臓器は、主に「心(しん)」と「肝(かん)」(肝臓)です。
心は、全身に血を巡らせ、また精神状態とも深く関わる臓器。その機能が低下すると、血の栄養が体に十分に行き届かず、また睡眠障害や精神の不安定にもつながり、慢性的な疲労を感じやすくなります。
一方、肝は血の貯蔵庫として機能するほか、気の巡りをスムーズに保ち、ストレスを発散させる、血流や胃腸の働きをサポートする、といった働きもあります。こうした機能が低下すると、ストレスのダメージで疲労を招きやすく、血流の悪化や胃腸虚弱から元気が失われがちになるのです。

しっかり栄養を取って、不足しがちな血を養うことが大切です。肝はストレスに弱いので、日頃のストレス発散も意識して。
摂り入れたい食材
心を養う:小麦、ハツ、卵、百合根、蓮の実、らっきょう、玉ねぎ、ぶどう、納豆 など
肝を養う:そば、レバー、しじみ、うなぎ、鮭、小豆、黒きくらげ、酢、ブルーベリー、ジャスミン、菊花 など

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3 生命エネルギーが衰える 「腎虚(じんきょ)」タイプ

気になる症状
腰痛、腰の冷え、腰が重い、足腰が弱い、めまい、健忘、耳鳴り、むくみ、尿が出にくい、頻尿、尿漏れ、冷え、舌の色が淡い、舌苔が白い
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改善ポイント
五臓の「腎」は、生命エネルギーの源「精」を蓄える臓器。また、五臓六腑の働きを支
える根本であり、体内のすべての「陰液(いんえき)」(血や潤い)や「陽気」(体を温めるエネルギー)の根源でもあります。
 
このように、腎は生命活動の根本を担う大切な臓器ですが、その働きは、加齢や慢性疾患による消耗などで自然と衰えてしまいます。すると、精の不足、五臓六腑の機能低下などを招いて、生命力そのものが低下してしまうことに。また、体内の血や潤い、陽気なども不足しがちになり、さまざまな不調を招きやすくなることもあります。こうした状態が全身の虚弱につながり、慢性疲労を起こしやすくなるのです。

体の冷え、過度な運動・労働などは腎の消耗につながるので、日頃から身体を温め、きちんと休息をとるようにしましょう。
摂り入れたい食材
えび、くるみ、黒豆、黒ごま、山芋、にら、きのこ類、松の実、栗、羊肉、なまこ、すっぽん など

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point!暮らしのポイント

・1日3食、バランスよくしっかり栄養を取りましょう。よく噛んで食べることも心がけて。
・体を動かす習慣をつけ、基本的な体力づくりを。散歩、水泳、ヨガ、太極拳など有酸素運動がおすすめです。
・ 入浴で身体を温め、疲労回復、血行の促進を。就寝前の入浴は、睡眠の質を良くしてくれます。
・しっかり睡眠を取るためにも、夕方以降はカフェインを控えめに。
・趣味やおしゃべりなど、好きなことを楽しんでストレス発散を。

【疲労に効くツボ】
・足三里(あしさんり):膝頭の外側の下にできるくぼみから指4本下
・湧泉(ゆうせん)…足裏の中心より上の方、足指を曲げると「人」の字状の交点にできるくぼみ

疲労に効くツボ

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PROFILE

中医学講師/監修 菅沼 栄先生

1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。 主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)など。

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CHECK!

まずは、自分の体質タイプを
チェックしよう!あなたの体質はどのタイプ?

同じ症状でも体質が違えば
対策は人それぞれ異なります。
まずは中医学の視点から
あなたの体質タイプを知りましょう。

TYPEA

「元気不足」タイプ
気虚(ききょ)

エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?

TYPEB

「イライラ」タイプ
気滞(きたい)

気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?

TYPEC

「血液の不足」タイプ
血虚(けっきょ)

カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?

TYPED

「血液ドロドロ」タイプ
瘀血(おけつ)

全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?

TYPEE

「潤い不足」タイプ
陰虚(いんきょ)

カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?

TYPEF

「ため込み」タイプ
痰湿(たんしつ)

水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?

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