監修:菅沼 栄先生(中医学講師)

足腰の衰え、疲労感、認知機能の低下……。単なる“老化現象”とされていたこうした症状を、最近では「フレイル」と呼んでいます。注目したいのは、フレイルは“予防・改善できる”と考えられていること。健康寿命をのばすためにも知っておくべきことをご紹介します。
※フレイルとは、虚弱を意味する英語「Frailty(フレイルティー)」をもとに、日本老年医学会が提唱した造語

フレイルは“要介護状態”の前段階

「フレイル」とは、加齢によって筋力や心身の活力が低下した状態のこと。健康な状態から要介護状態への“移行段階”とされています。
フレイルには、身体的フレイル(筋力の低下や体重減少)、精神心理的フレイル(うつや認知機能の低下)、社会的フレイル(孤独や閉じこもり)の3つの要素があります。中でも注意したいのは、カラダとココロの活力の低下。後期高齢者(75歳以上)の多くは、足腰の衰え、うつ、物忘れといったフレイルの状態を経て要介護状態になるとされていて、その予防・改善の必要性が高まっています。
 
中医学では、女性は35歳、男性は40歳を過ぎた頃から老化が始まると考え、こうした老化による症状を「虚労(きょろう)」と捉えます。虚労は、臓器の虚弱や身体に必要な要素「気・血・津液(しんえき)・精」の不足により、心身の働きが衰えた状態のこと。そのため、弱った臓器を整え、不足した要素を補うことで、心身ともに健やかな状態を取り戻せると考えます。

西洋医学でも、フレイルは早期の発見、適切な対処で改善できる(健康な状態に戻る)ということがわかってきました。年齢を重ねて心身の衰えを感じている人も、老化だからと諦めてはダメ。いつまでも自分の足で歩き、介護知らずで過ごすためにも、日頃の積極的なケアでフレイルを予防・改善しましょう。

【フレイルチェック】
3つ以上あてはまればフレイルの可能性あり!
□自然に体重が減った(半年で2~3kg)
□わけもなく疲れる
□筋力が落ちた(重いものを持つのが大変など)
□歩く速度が遅くなった
□活動量が減った(あまり出かけなくなったなど)

check!カラダとココロの衰えを改善!「フレイル」の対処法

放っておくと要介護につながる可能性もあるフレイル。予防・改善には、日頃の養生で体質を整えることがとても大切です。「気になる症状」を参考に自分の身体を見直し、弱っている臓器があれば積極的にケアしましょう。

1 カラダの衰えが気になる(1) 「肺」のケア

気になる症状
疲れやすい、息切れ、咳、喘息、痰、かぜを引きやすい、汗をかきやすい、喉の乾燥、皮膚の乾燥、便の乾燥、声が細い、顔色が白い、舌苔が白く薄い
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改善ポイント
「肺」は体内の「気」(エネルギー)をコントロールする臓器で、身体の免疫力とも深い関わりがあります。そのため、肺の機能が衰えると、身体のエネルギー不足や免疫力の低下を招くことに。肺は乾燥に弱いので、適度な水分補給、潤いの多い食材選びなどを心がけ、身体を乾燥から守り
ましょう。
摂り入れたい食材
肺を養い潤いを与える:
白きくらげ、百合根、きのこ類、梨、ねぎ、しょうが など

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2 カラダの衰えが気になる(2) 「脾胃(ひい)」のケア

気になる症状
体重が減った、筋力が落ちた、疲労感、倦怠感、手足に力が入りにくい、食欲不振、胃もたれ、お腹の張り、下痢、軟便、痩せ、顔色が黄色い、舌の色が淡い、舌苔が白くネバネバする
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改善ポイント
「脾胃」(消化器系)は食事の栄養から「気」(エネルギー)を生み出す臓器。その機能が衰えると、栄養不足で全身の臓器の働きが低下し、体力も落ちてしまいます。低栄養の状態は高齢者に多く、筋力の低下にもつながるので要注意。日頃から脾胃を健やかに保つよう心がけ、しっかり栄養を取りましょう。
摂り入れたい食材
脾胃を養い体力をつける:
米、大豆製品、アジ、鶏肉、豚ヒレ肉、牛乳、じゃがいも、なつめ、りんご、しそ など
※脾胃は冷えに弱いので冷たい飲食は控えめに

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3 カラダの衰えが気になる(3) 「腎」のケア

気になる症状
歩く速度が落ちた、腰痛、腰の冷え、腰が重い、足腰が弱い、めまい、物忘れ、耳鳴り、むくみ、頻尿、冷え性、舌苔が白く少ない
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改善ポイント
「腎」は生命力の源「精(せい)」を蓄える臓器。そのため、腎の機能が衰えると生命力の低下につながり、腰痛や物忘れといった老化症状が起こりやすくなります。腎の働きは加齢とともに衰えるため、日頃からケアすることが大切。腎は冷えが苦手なので、身体を温める食材選び、冷えない服装などを心がけましょう。
摂り入れたい食材
腎を養い老化症状を和らげる:
えび、くるみ、黒豆、黒ごま、山芋、にら、松の実、栗、なまこ など

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4 ココロの不調が気になる(1) 「心(しん)」のケア

気になる症状
動悸、不整脈、胸苦しい、不安感、不眠、顔色が白いまたは暗い、舌の色が淡く暗い
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改善ポイント
「心」は「血(けつ)」を全身に巡らせ、精神をコントロールする臓器。心に十分な血があり健やかに保たれていれば、精神状態も安定します。ところが、体内の血が不足して心の機能が低下すると、不安感やうつなどの不調が現れるように。気になる症状がある人は血を十分に養うよう心がけ、心の働きを整えましょう。
摂り入れたい食材
気・血を養い血流を良く:
小麦、ハツ、卵、らっきょう、玉ねぎ、ぶどう、納豆 など

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5 ココロの不調が気になる(2) 「肝(かん)」のケア

気になる症状
活動量が減った(あまり出かけなくなった)、憂うつ、イライラ、落ち込み、不眠、めまい、目の乾燥、眼精疲労、月経不順、月経量が少ない、足がつりやすい、手足のしびれ、爪が薄い、舌の色が淡い
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改善ポイント
「肝」は「気」(エネルギー)の流れをスムーズに保ち、ストレスを発散させる臓器。また、精神を安定させる「血(けつ)」の貯蔵庫でもあり
ます。そのため、肝の機能が衰えるとストレスを上手く処理できず、精神トラブルを招きがちに。肝は過剰なストレスに弱いため、“ 小さなストレ
スはこまめに発散”を心がけましょう。
摂り入れたい食材
血を養い肝の働きを整える:
そば、レバー、しじみ、うなぎ、クコの実、黒きくらげ、酢、うこん、小豆、ブルーベリー など

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point!暮らしのポイント

【食事】
・1日3食、肉、魚、野菜、海藻などをバランスよく取るよう心がけて。
・高齢者の食事はたんぱく質が不足しがち。肉、大豆製品、卵などを意識して取りましょう。
・食事はよく噛む習慣を。上手にのみ込む力をつけるトレーニングにもつながります。

【運動】
・「歩く」ことはとても簡単な運動になります。目標は1日8,000歩。普段歩かない人は無理をせず、少しずつ歩数を増やしていきましょう。
・衰えた筋肉を鍛えるには、適度に負荷のかかる運動を。早歩き、足踏み(5分程度)、腰を軽く下ろすスクワットなど、無理のない範囲で取り組みましょう。

【その他】
・地域活動や趣味のサークルなどに参加して、積極的に社会と関わりを。脳の老化予防、心身の健康維持につながります。
・ストレスはこまめに発散を。ブラシや指の腹で頭皮を刺激するのもおすすめです。


月刊誌『チャイナビュー』(イスクラ産業発行)より掲載

あなたの体質タイプをチェック

PROFILE

中医学講師/監修 菅沼 栄先生

1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。 主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)など。

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まずは、自分の体質タイプを
チェックしよう!あなたの体質はどのタイプ?

同じ症状でも体質が違えば
対策は人それぞれ異なります。
まずは中医学の視点から
あなたの体質タイプを知りましょう。

TYPEA

「元気不足」タイプ
気虚(ききょ)

エネルギーとなる気が不足しています。
疲れやすくカラダがだるい、やる気が出ない、かぜをひきやすいなど、思い当たりませんか?

TYPEB

「イライラ」タイプ
気滞(きたい)

気の巡りが滞っています。
イライラして怒りっぽい、生理不順、お腹が張ってガスがでるなど、思い当たりませんか?

TYPEC

「血液の不足」タイプ
血虚(けっきょ)

カラダの栄養となる血が不足。
冷えやめまい、立ちくらみ、抜け毛、爪が割れやすいなどの悩みはありませんか?

TYPED

「血液ドロドロ」タイプ
瘀血(おけつ)

全身の血の巡りが滞った状態です。
目の下のクマ、シミ、頭痛、がんこな肩こり、つらい生理痛で悩んでいませんか?

TYPEE

「潤い不足」タイプ
陰虚(いんきょ)

カラダの潤いが不足しています。
のぼせ、ほてり、寝汗、肌の乾燥やかゆみ、経血量が少ないなど、気になりませんか?

TYPEF

「ため込み」タイプ
痰湿(たんしつ)

水分代謝が落ちた状態です。
太りやすい、むくみ、ニキビ、一日中眠気が取れないなどで悩んでいませんか?

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