よくわかる中医学vol.19-すべてのものに宿る「陰陽」- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

STUDY中医学の基礎

よくわかる中医学vol.19
-すべてのものに宿る「陰陽」-

2019.03.19 UPDATE

監修:楊 敏 先生(中医学講師)

よくわかる中医学vol.19

よくわかる中医学シリーズ、今回のテーマはすべてのものに宿っている性質「陰陽」です。陰陽学説は中医学における物事の考え方のもととなっており、現代の最先端の研究をしている科学者たちにも大きな影響を与え、科学の分野などでも活用されています。

古代の中国哲学「陰陽」とは、いったいどのような考え方なのでしょうか。

すべてのものに宿る「陰陽」

陰陽学説とは、世の中のすべてのものは「陰」と「陽」という正反対の性質を持ち、お互いに協力・影響し合いながら、物事を支え動かしているという考え方です。影があるから光があるように、どちらかが単独で存在することはありません。

世の中のさまざまなものは、陰陽の性質に沿って分けられます。
一般的に、陰は陽に比べて物質的です。よりゆっくりしていて、より冷たいという性質があります。一方の陽の性質は、陰に比べて非物質的です。より動きがあり、より速く、より温かいという性質があります。

陰陽の属性について、例えば人間は、もともと四足歩行だったことから考え、日が当たらない腹は陰で、日が当たる背中は陽とされました。また、季節では、より寒い秋・冬が陰、より暖かい春・夏が陽です。さらに、秋は陰の中の陽、冬は陰の中の陰というように細かく分かれていきます。

下の表は他にも挙げられる陰陽の属性を一覧にしたものです。

世界の陰陽を図解する「陰陽太極図」

下の図は、「陰陽太極図(いんようたいきょくず)」です。目にしたことはあってもどういった意味のあるものなのか知らない方は多いのではないでしょうか?

陰陽太極図は1つの円の中に陰(黒い部分)と陽(白い部分)が同じ割合で分かれていて、世の中の全てのものは陰と陽が均衡を保って存在していることを示しています。

また、陰陽太極図の黒い部分には小さな白い丸があり、白い部分には小さな黒い丸があることが分かります。これは陰の中にも陽、陽の中にも陰があるという意味です。この小さな丸もまた陰陽太極図であり、陰陽はさらに細かく分かれていることを示しています。

陰陽太極図から読み解く陰陽の関係

今度は下図の陰陽太極図を見ながら、陰陽の関係についてみていきましょう。関係性は大きく分けて4つあります。
(1)対立
ものごとには陰と陽という両面があり、正反対の性質をもちます。陰陽太極図では正反対の白と黒で分けることで対立関係を表しています。
(2)依存
陰と陽は正反対でありながら、一方がなくなるともう一方もなくなります。陰陽太極図を見ると、黒(右側)があるから白(左側)が存在するように、ものごとは陰陽で互いに依存しながらバランスを保っています。
(3)消長制約(しょうちょうせいやく)
陰と陽は柔軟性があり、一定の範囲の中で絶えず変動し影響を与え合っています。陰陽太極図ではこのことを曲線で表しています。
例えば、陽の時間「昼」と陰の時間「夜」で考えていきましょう。「陽の中の陽」と言われる午前6時~正午の時間帯は陽が最も高まり、陰陽太極図では白い部分が占めています。正午を過ぎると徐々に黒い部分(陰)が増していき、「陰の中の陰」と言われる午後6時~0時の時間帯には陰が最も高まり、黒い部分が占めていきます。0時を過ぎると今度は白い部分(陽)が増していくように、陰陽は絶えず変動しているのです。
(4)転化(てんか)
陰と陽の変動は極限に達すると相手に転じることがあります。この転化を現わす言葉に「寒が極まると、熱が生じ、熱が極まると、寒が生じる」という表現があります。
例えば、高熱が出たときは熱くなりますが、汗をたくさんかき体は冷たくなっていきます。寒い冬が極まるとやがて暖かな春が来て、熱い夏が極まるとやがて涼しい秋になります。

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今まで意識していなかったことでも、私達自身や身近なものに陰陽の考え方を当てはめることができるのです。
ここまで「陰陽学説」の基本について紹介してきました。次回のよくわかる中医学では、陰陽学説を使った中医学の応用編をお伝えします。

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 敏 先生

楊 敏(よう びん)
上海中医薬大学医学部および同大学院修士課程卒業。同大学中医診断学研究室常勤講師・同大学附属病院医師。
1988年来日。東京都都立豊島病院東洋医学外来の中医学通訳を経て、現在、上海中医薬大学附属日本校教授。日本中医薬研究会や漢方クリニックなどの中医学講師および中医学アドバイザーを務める。
主な著書に『東洋医学で食養生』(世界文化社・共著)『CD-ROMでマスターする舌診の基礎』、『(実用)舌診マップシート』(東洋学術出版社)など。