よく分かる中医学vol.9-「肺」の働きと養生- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

STUDY中医学の基礎

よく分かる中医学vol.9
-「肺」の働きと養生-

2018.04.17 UPDATE

監修:楊 暁波 先生(中医学講師)

「よくわかる中医学」では、vol.2から五臓について紹介しています。今回のテーマは、五臓の中から「肺」です。
空気が乾燥する時期は「肺」のトラブルを起こしやすくなります。かぜやインフルエンザを予防するためにも、肺の機能をしっかり高めて免疫力の高い身体をつくりましょう。

「肺」は「気」を生む源

中医学では、「肺」は呼吸器系の働きだけでなく、免疫系の機能や皮膚、鼻の状態に関わるなど、さまざまな役割を担っていると考えます。
主な働きは「呼吸機能」で、自然界から酸素(清気(せいき))を摂り入れ、体内にできた汚れた気、二酸化炭素(濁気(だっき))を吐き出します。
肺は「気」(エネルギー)の源ともいわれ、呼吸を通じて体内の気を生み出すことも大切な仕事。身体全体に気を巡らせることで、全身の「元気」を支えています。また、ウイルスなどの侵入を防ぐ「衛気(えき)」(身体の防衛力となる気)も、肺の働きから生まれるもの。肺が元気で衛気が十分にあれば、身体の免疫力もアップ。かぜやインフルエンザを寄せ付けない、丈夫な身体をつくることができます。
その他、肺は血液を循環させる「心(しん)」の機能や、皮膚・鼻の状態とも密接な関わりがあります。
このように、肺は“元気の源”とも言える大切な臓器。早めの養生で肺を元気に保つよう心がけましょう。

「肺」の働きと養生法 〜元気な肺で、免疫力アップ&潤い美肌〜

肺は乾燥に弱く、とてもデリケートな臓器。ちょっとした刺激にも影響を受け、咳や喘息などの症状が現れます。体調を整えながら、身体の潤いをしっかり保つよう心がけましょう。
【「呼吸」のコントロール】
肺の主な働きは「呼吸」。自然界から酸素を摂り入れ、体内にできた二酸化炭素を吐き出しています。酸素は呼吸によって肺に取り込まれ、血液が全身の細胞へ届けています。
この機能が低下すると、咳や痰、喘息、息苦しさなどの症状が現れるように。あまり意識することはありませんが、呼吸は生命を維持する基本となる大切な機能です。
腹式呼吸のトレーニングや食事の気配りなど、日頃の養生で肺の機能を高めるよう心がけましょう。
●気になる症状
咳、痰、喘息、胃もたれ、息苦しさ、鼻づまり など
【「気」の生成と免疫機能】
中国には「人は“気”に頼って生きている」という言葉があります。これは、体内の「気」(エネルギー)の充実が、元気の源になっているということ。肺は、呼吸を通じて気を生み出し、全身に巡らせて身体の「元気」を支えています。つまり、肺が強くしっかり呼吸ができれば、身体の元気にもつながるのです。
また、肺の気は「衛気(えき)」(身体の防衛力となる気)の元でもあります。衛気は、皮膚や鼻の粘膜を覆ってウイルスなどの侵入を防ぐ、身体の免疫力のようなもの。そのため、肺の機能が低下して衛気が不足すると、かぜやインフルエンザ、花粉症などにかかりやすくなってしまいます。
日頃からかぜを引きやすい、身体が弱い、といった不調を感じている人は、肺の気が不足しているサイン。積極的な養生を心がけ、肺を元気に保つよう心がけましょう。
●気になる症状
かぜを引きやすい、かぜを引くと長引く、空咳が出る、虚弱体質、発声が弱い など
【「心(しん)」のサポート】
「心肺機能」という言葉があるように、心と肺の働きには深い関わりがあります。心は血液を送り出すポンプの役割をしていますが、送り出された血液は自ら循環することができません。そこで、血液を推して体内を循環させる役割を担っているのが、肺の気です。
心の循環機能をサポートするこの働きによって、血液は全身を巡り、身体のすみずみに栄養素や酸素を運ぶことができます。そのため、肺の機能が低下すると血液の循環が悪くなり、さまざまな不調が現れるように。
肺の不調は、心にも大きく影響します。肺気腫から心不全などの重大な症状を引き起こすこともあるので、肺を健やかに整えるよう日頃の養生を大切にしましょう。
●気になる症状
咳、喘息、胸苦しい、呼吸が浅い、息切れ、動悸 など
【「皮膚」・「鼻」のコントロール】
肺は、皮膚に「衛気(えき)」(身体の防衛力となる気)や水分を届け、免疫力を高めたり、皮膚の潤いを保ったりする働きをしています。そのため、肺の機能が弱くなると、ウイルスや花粉などが体内に侵入しやすくなり、肌荒れやかゆみなどの肌トラブルも起こりやすくなります。肺に熱がこもっていると、にきびや皮膚の赤み、腫れといった症状が現れることもあります。
また、肺は鼻とも密接な関わりがあり、肺が弱くなっていると鼻炎や花粉症などの不調が現れやすくなることも。
こうした皮膚や鼻の不調は、クリームなどの保湿剤や薬に頼るだけでなく、肺の機能を高めて身体の中から改善することが大切です。
●気になる症状
肌荒れ、皮膚の乾燥・かゆみ、にきび、皮膚の赤み・腫れ、じんましん、鼻炎、花粉症 など

「肺」の不調はココをチェック!

「肺」の気が不足していると、肌や髪の状態に現れます。下記のポイントを参考に、気になる症状があれば積極的に養生してみてください。
●肌の状態は?
「ハリがない」「弾力が足りない」「くすみが気になる」「乾燥する」といった悩みを感じている人は、肺の気が足りないサインです。
●髪の状態は?
「ツヤがない」「パサつきが気になる」。こんな髪トラブルを感じたら、肺の症状をチェックしてみましょう。

<暮らしの養生ポイント>

●肺や皮膚に潤いを補給
肺は「潤いを好み、乾燥を嫌う」という特徴があります。食事などで肺の潤いを保つことはもちろん、保湿剤を利用して皮膚の潤いを守ることも大切に。
●「腹式呼吸」で肺を鍛える
肺の機能を強くする「腹式呼吸」を。背筋をのばして座り、お腹を膨らませながら深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出します。陽気がたっぷりある朝の時間に、一日15回程度がおすすめ。
●季節に応じた養生を
「春」は気がのびのびとする季節。早起きをして爽やかな空気を吸い込み、肺をキレイに。
「夏」は気を補いながら、水分の補給を。夏バテ予防につながります。
「秋」は乾燥が気になる季節。潤いの多い食材で、肺の乾燥を防ぎましょう。
●「肺を潤す食材」と「気を補う食材」を食事に摂り入れる
・肺を潤す食材
はちみつ、杏仁、豆腐、白きくらげ、梨、蓮根、大根、百合根、ふかひれ など
・気を補う食材
きのこ類、肉類、えび、山芋、さつまいも、じゃがいも など

●1日1回、ツボを刺激
毎日刺激して、肺の機能をアップし、呼吸器系のトラブル解消をめざしましょう。

尺沢(しゃくたく):軽く肘を曲げた内側にできる横じわの真ん中にある太い筋の親指側のみぞ

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この記事を監修された先生

中医学講師楊 暁波 先生

楊 暁波(よう きょうは) 中医学講師。
不妊カウンセラー。毛髪診断士。世界中医薬学会連合会皮膚科専門委員会理事。1984年雲南中医薬大学医学部卒業。94年埼玉医科大学客員研究員として来日、96年日本遺伝子研究所に勤務。99年より日本中医薬研究会専任講師。共著に「やさしい中医学シリーズ3 誰も書かなかったアトピー性皮膚炎の正体と根治法」「やさしい中医学シリーズ4 あなただけの美肌専科」(ともに文芸社)「イスクラ中医学入門「1」中医基礎学」、「同「2」中医診断学」(ともに日本中医薬研究会)、「[簡明]皮膚疾患の中医治療」(東洋学術出版社)など