よく分かる中医学vol.6-「心」の働き- - 漢方・中医学の情報サイト|COCOKARA中医学

STUDY中医学の基礎

よく分かる中医学vol.6
-「心」の働き-

2018.01.16 UPDATE

監修:菅沼 栄先生(中医学講師)

「よくわかる中医学」では、vol.2から五臓について紹介しています。今回のテーマは、五臓の中から「心(しん)」です。

中医学でいう「心」は、西洋医学でいう心臓の循環機能をさすだけでなく、全身の臓腑機能の原動力とみなします。また、脳の機能は心に所属し、精神活動や自律神経系の働きも担っていると考えます。
従って、心の機能が低下すると、全身の臓腑に影響を与えるだけでなく、精神的な不安などにもつながります。
積極的な心の養生で、心身ともに毎日元気に過ごしましょう。

生命活動の中心を担う「心」

中医学では「心」は「君主の官(くんしゅのかん)」と呼ばれ、生命活動の中心を担う最も大切な臓器の一つとされています。
心の主な働きは、「血の循環」「精神のコントロール」の2つ。
「血の循環」は、血流と血管の状態を管理し、全身に血を巡らせる働きのことです。
もう一つ、「精神のコントロール」は「心蔵神(しんぞうしん)」といって、五臓の心は精神を宿しているという中医学の考えによるもの。血液循環が良好で血が十分にあれば、心の機能が健やかに保たれ、精神状態が安定します。
心は全身の臓腑や精神状態をコントロールする大切な役割を担っています。
心の機能が低下すると、身体全体に大きな影響を与えてしまうため、日頃から心の状態をチェックして積極的に養生するよう心がけましょう。
それでは「心」の2つの働きとその養生法について、それぞれ詳しくご紹介します。

「血の循環」機能

「心」の働きは生命活動の中心。「血」を全身に巡らせ、臓器や組織に栄養素を届けるだけでなく、身体を温め、体温を保ち、冷えから守る働きも担っています。
また、血を運ぶ「血管」の状態を管理するのも心の役割です。
こうした心の機能が低下すると、血行不良から動悸や頭痛、胸痛、冷えといったさまざま不調が現れるように。
また、血の不足も心の機能低下につながるので、血を十分に養いながら、血の循環を促すように心がけましょう。

●気になる症状
動悸、胸痛、頭痛、冷え、顔色が悪い(青紫または蒼白)、むくみ、舌の色が暗い、舌に黒っぽいシミやアザがある、不整脈

●摂り入れたい食材
気血を補い血行を良くする食材を:小麦、らっきょう、シナモン、たまねぎ、赤ワイン、サンザシ など

「精神のコントロール」機能

血の循環を担う「心」と精神状態には密接な関わりがあると中医学では考えます。血が十分にあって心の働きが保たれていれば、精神状態は安定して、脳の働きが活発になります。記憶力や集中力も高まり、質の良い睡眠が得られるのです。
反対に、血が不足して心の機能が低下すると、精神状態が不安定になり、イライラ、不安、焦燥感、集中力の欠如、不眠、物忘れといった症状が現れるように。このような不調を感じたら、まずは血を養う食材や漢方、バランスのとれた食事で血をしっかり養うことが大切。

●気になる症状
精神不安定、イライラ、涙もろい、寝付きが悪い、眠りが浅い、不眠、物忘れ

●摂り入れたい食材
血を養う食材や気分を落ち着かせる食材を:牡蠣、ぶどう、百合根、蓮の実、なつめ、独眼肉、真珠粉 など

<汗のかき過ぎに注意!>

汗の分泌にも心は関わっています。
「汗は心の液」や「汗血同源(かんけつどうげん)」という言葉があり、汗は心の水分が変化したもの、汗と血は同じ源から生まれるという意味です。中医学では、汗は体内の有用な水分や、血液中の水分が変化して出てくるものと考えます。

汗をかき過ぎると、心の水分が不足して血液がドロドロになり、血の循環機能への影響によって動悸や不整脈につながることも。
運動の前には、水分補給などで体内の潤いを保つように心がけましょう。

●気になる症状
多量の汗、動悸、血液の濃縮による血行不良

●摂り入れたい食材
収斂作用(しゅうれんさよう)や酸味のある食材を:牡蠣、もち米、レモン、梅干し、五味子 など

次回の「よく分かる中医学vol.7-感情と「心」の関係-」では、感情と「心」の関係や、顔色や舌から分かる「心」の不調についてご紹介します。

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この記事を監修された先生

中医学講師菅沼 栄先生

1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。
1979年、来日。
1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。