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トロリと甘いシロップタイプのお薬

2016.12.22 UPDATE

監修:部長 COCO(COCOKARA温活部)

漢方には生薬を煎じて服用するもの、粉末にしてそのまま服用するもの、粉末にしたものに蜜などを加え丸薬にして服用するものなどがあります。また、生薬から抽出したエキスを顆粒剤や錠剤、丸剤にしたもの、シロップ剤などもあります。
今回は、シロップタイプの「膏薬(こうやく)」についてお話ししましょう。

膏薬の由来は『三国志』にあり!?

今からおよそ1800年前の三国時代に活躍した魏(ぎ)の丞相・曹操(そうそう)が頭痛持ちだったことは、『三国志』ファンならご存知の方も多いでしょう。曹操の一生は戦の連続で、加齢による体力の衰えに加え、持病の頭痛の発作に苦しんでいました。
建安5年(西暦200年)のこと、当時曹操の最大の敵であった袁紹(えんしょう)との「官渡の戦い(かんとのたたかい)」の最中に、曹操は頭痛の発作を起こしました。その際、名医華佗(かだ)の鍼灸治療を受け、一度針を刺しただけで頭痛が治まりました。曹操は華佗を自分専属の医師となるよう要請しましたが、庶民の医師でありたいと願った華佗は申し出を断り、曹操の治療と養生(ようじょう)のために、処方を出しました。
戦場では移動が多く、毎日きちんと煎じることが不可能だったので、処方を膏薬にして、携帯と服用をしやすくしました。これが膏薬のはじまりと言われています。

群雄が割拠する三国時代、黄河の支流において「官渡の戦い」が繰り広げられました

良薬は口に甘し

膏薬は、生薬を煎じ濾過した後に煮詰めて濃縮してから、保存性を高めるために白糖や黒砂糖、氷砂糖、蜂蜜などの糖類を添加してつくられるトロリとした液状の薬のこと。糖類が添加されているので、生薬独特の苦味が苦手な人や子どもにものみやすいのが特徴のひとつ。
膏薬は中国では一般的なもので、病気の改善だけでなく、健康増進や滋養強壮、体質改善などに用いられ、体質に合うものであれば子どもから高齢者まで幅広く服用されています。
市販薬では、生薬の当帰や阿膠(あきょう)、亀板(きばん)、鼈甲(べっこう:すっぽんの甲羅)などを用いたものが「陰」(血と津液)を養う滋養強壮薬として良く知られています。
市販薬のほか、中国では一人ひとりの体質に合わせて処方されるオーダーメイドの膏薬も人気です。“膏方”とも呼ばれるこの薬は、専門外来ができるほどの人気で、特に冬の2ヶ月間ほどは、滋養のために毎日服用する人が多いのだとか。比較的高価なこともあり、一般的には時間と金銭面で余裕のある高齢者に好まれているのですが、多忙な現代では仕事に疲れた若者たちにも愛用者が増えているそうです。

中国の病院では秋冬は膏薬を求める患者さんで中医学専門の外来が混み合います

冬に「陰」を養って、活動的な春夏を

中国には「冬令進補、来年打虎」ということわざがあります。「冬に体を補うと、翌年には虎を仕留められるほど丈夫になる」という意味です。
また、中医学の基礎理論には「秋冬養陰(しゅうとうよういん)」という考えがあり、秋冬は寒冷で乾燥しているので陰(血と津液)を養うのにふさわしい季節といえます。
サイト内の記事女性の元気は「血」が基本」でもご紹介しているように、女性の健康や美しさの基本は「血」にあると中医学では考えています。月経や出産などを経験する女性は、「陰」に属する血を消耗しやすく、不足すると不調も起こりやすくなってしまいます。
虚弱体質や慢性疾患をお持ちの方、高齢者も陰が不足しがちです。秋冬に膏薬でしっかりと陰を養うことで体力が充実し、陽が盛んになる春夏を活動的に過ごすことができるのです。
冬の養生で体を養う。そんな中医学の知恵を役立てたいですね。

陰を養っていつも健やかに過ごしたいですね

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この記事を監修された先生

COCOKARA温活部部長 COCO

冷えに悩む日本全国の女性を救いたいという想いのもと、全国の女性の冷え解決に向けて奮闘中のCOCO部長。 COCOKARA中医学では、「温活」をテーマに家庭でできる食事・生活養生の知恵を発信している。